Dance in the rain
14. ホワイトスコール
RRRRR……

小さく鳴り出したスマホのアラームを止めて、起き上がると、
祐奈を起こさないように、そうっとTシャツとスウェットパンツに着替えた。

アパートの前で膝や足首を曲げ伸ばして、念入りに体をほぐしてから。
あたしはまだ寝静まる早朝の街へと、駆けだした。

翔也の部屋を出てから、あっという間に1か月が過ぎて、
もう夏も終わりに近づいていた。

最後の力を振り絞るように鳴きわめくセミの声を聞きながら、リズムを崩さないように走っていく。

あ、不動産屋……
チラッと目の端に映った看板、その値段と間取りを頭に入れる。

部屋、早く探さないとな。
祐奈のこと起こさないようにって、毎朝気を遣うのも大変だし……。
考えながら、あたしは猫の額くらいって表現がぴったりな、こぢんまりした児童公園へ入っていった。

膝を曲げ伸ばしてプリエ、
つま先を伸ばしてバットマン・タンジュ、デガジェ……
子供用の鉄棒をバーに見立てて、バレエの基礎であるバーレッスンを一通りこなして。
眠っていた体を起こして、整えたら。

サクセションやスウィング。
コンテンポラリーダンスのベーシックな動きで、
移動する重心の感覚や、オフバランスの動きを、丁寧に自分の中から掘り起こしていく。
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