Dance in the rain
「花梨ちゃーん!」
びくって飛び上がって、声のした方を見ると。
「久美さんっ!」
いつもと変わらない笑顔で近寄ってくる久美さんがいて、肩から力が抜けた。
久美さんは、「すごいホテルよねえ」って感心したようにロビーを見渡してから、声を潜めた。
「さっきフロントで支配人さんに挨拶したんだけど、なんでもアラブの王族とか、香港マフィアのドンとかも泊まるらしいわよ」
あ、アラブに、マフィア!?
なんだか世界が違いすぎて、想像できないっ。
「く、久美さぁん、あたし緊張してきましたっ」
「大丈夫よぉ。別にマフィアが見に来るわけじゃないんだから」
ケラケラって笑う底抜けな明るさに、少しだけ、あたしの気分は持ち直した。
よかった。うん。
大丈夫だ。きっと、大丈夫。
あんなに練習したんだし。
いつも通りやればいい。
ふうぅうって、深呼吸した。
その時。