Dance in the rain
廊下の突き当たり、ガラスばりのドアを開けると、その向こうはキッチンとリビングダイニングだった。
中を見渡したあたしは、キッチンに翔也の姿を見つけて、ホッと息をはく。
シンクに体重を預けるようにもたれて、黒いシャツとジーンズ姿の翔也が立っていた。
ごくごくって。
大きなペットボトルを傾けて直接水を飲んでいて。
上下する喉ぼとけ、こぼれる水滴と、濡れる胸元。
そのコラボレーションショットがあまりにも色っぽくて、不覚にも見入ってしまう。
ふいに。
ボトルをあおったその恰好のまま、ぴくっと動きが止まって。
そろそろと目線だけを降ろした彼が、あたしの姿を認めた。
「ぶっっ!!」
盛大に水を噴き出して、あたしをまじまじと見つめる。
「花梨!? おまっ……いつの間に……っ」
「あ、ごご……ごめんなさい。おどかしちゃった?」
足音、気づかなかったかな?
「いや……大丈夫、だけど」
あたしをジロジロって見てから、「まあいいか、ちょうどよかった」ってつぶやく。
「オレ、これから出るから。腹減ってたら冷蔵庫の中、適当に漁って食って。パンくらいしかないけど」
「え……と、うん。ありがと」