Dance in the rain
「あと、これ」
小さな何かが、ぽいっといきなり放られて、あたしは慌てて両手を伸ばして、なんとかキャッチした。
手のひらに、ひんやりと金属の感触が伝わる。
え。
これって……か、鍵?
「どっちが遅くなるかわかんねえから、戸締りだけは毎回しっかりしろよ。それから、ここにあとで何かスタンプ送っといて」
渡されたメモには、アルファベットが並んでる。
もしかして……これ、ラインのID?
え……と、それってつまり。
「い、いいの!? ここにいても?」
「いたくねえのかよ?」
翔也の眉がすっと上がって、不快そうな表情を作る。
あたしは急いでブンブン首を振った。
「ううんっ! いたいです! いたい! いさせてください!」
恥も外聞もかなぐり捨てて叫んでから、当然のごとく浮かんだ疑問を口にする。
「でも……なんで? なんでそんなにしてくれるの?」
何かとんでもない交換条件とか、あとで出すつもりじゃないでしょうね?
「別に理由なんてねえよ。ただ、放り出してウリでもやられたら寝覚めわりぃってだけ。ボランティアだよボランティア。ちょうど猫でも飼おうかと思ってたし。お前、なんか似てるんだよな、昔拾った実家の三毛猫に」
み、三毛……あたしは、野良猫なのか……
まぁ、そんなようなものだけど。