Dance in the rain

え。うそ……

「いいんですか、あたしで」
あたしは、キョロキョロって店内を見回した。

こんな可愛いお店で、働けるの?
若干挙動不審気味に興奮するあたしを見ながら、2人は顔を見合わせて笑った。

「じゃ、自己紹介ね」って先に口を開いたのは、生成りエプロンくん。

「僕は仁科純、これはここのオーナーシェフ。通称マスター。で、僕の兄貴、仁科恭介」
「これってなんだ、これって。兄に対する尊敬の念が足りないぞ」
マスターが憮然と腕を組む。

え、二人って兄弟なの!?
そう言われてみれば、確かに、笑った時の垂れ目具合とか、なごやかな雰囲気がどことなく似てるかも?

あたしはガバッと立ち上がって、勢いよく頭を下げた。
「あああのっ野々宮花梨ですっ! よろしくお願いします!」

「よろしく、花梨ちゃん」
差し出されたお二人の手を、あたしはがっちり握った。


◇◇◇◇
その後、勤務時間やもろもろの打ち合わせをして、帰ってきたのは夕方。

合鍵を使って部屋に入ると、人の気配はない。
翔也はまだ帰ってないみたいだ。
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