Dance in the rain

帰り際、買い込んできた食材を冷蔵庫に詰めていきながら、
あたしはふと手を止めた。
お礼も兼ねて、夕食作ろうかなと思ったんだけど……もしかして迷惑かな。
こういうの、嫌いかな。めんどくさいかな?

豚肉を手に、うう……む、って考え込んで。

はあって脱力。
考えても仕方ないか。もう食材買っちゃったし。
迷惑だったら今日だけってことで……ね。

そう開き直って、あたしはキッチンの棚を漁り、
前もってチェックしておいたお鍋やフライパンを取り出した。

この部屋、ほんとに不思議なんだ。
食器やカトラリー、お鍋は棚いっぱいにあるのに、
調味料類はゼロ。
一人暮らしにしては、部屋数も合ってないし。

翔也って、一体何者? 何してる人なのかな。
今朝は昼近くに出ていったけど。まさか……ホストとか? あのカオだし?

ついつい妄想を膨らませそうになる自分に、ストップをかける。

ダメダメ!
詮索禁止。

誰にだって、触れてほしくないことくらいある。
あたしだって……。

キュッと唇を結んで、包丁を取り出した。
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