Dance in the rain
今夜のメニューは、生姜焼きと、ヒジキの煮物、小松菜のお浸し。
海外に暮らしてると、絶対和食フリーク率、高くなると思う。
今やどこの国にだって、日本食レストランはあるけど、やっぱり割高だし。
それくらいなら、同じように出費を覚悟しても、
調味料をそろえて家で作っちゃった方が、断然安上がりだから。
あたしのレパートリーは、ほとんど和食だ。
今度、翔也の好きな料理、聞いておこう。
心にメモして、あたしは鍋を火にかけた。
◇◇◇◇
「遅い……」
テーブルにぐたぁって突っ伏す。
全部作り終えて、外が暗くなっても、翔也はまだ帰ってこなかった。
帰りの時間、聞いてから作ればよかった、なんて今さら言っても遅いか。
ぐううぅううう……
「お腹、すいた……」
ぐうぅうううう……
だ、だめだ……。
空腹を紛らわせようと、立ち上がる。
音楽でも聴こうかな。それとも読書にしようかな。
リビングの片側の壁一面、パイプで固定されたシンプルな棚に並んだ、本や雑誌、CDを物色し始めた。