私と二人の物語
「じゃあ、帰るよ」

彼はそう言うと立ち上がった。

「あの…」

「ん?」

「どうして家がわかったんですか?」

「ああ…」

彼はとりあえず、立ったまま一呼吸おいた。

「つくしから聞いた」

「え?つくしさんから?」

私は彼女に家は教えていない。

「あ、いや、画廊に君の大学の時の同級生が来たらしい。その時に家は御影山手だと聞いたって。だから、後はすぐにわかった」

「ああ…」

たしかに、武井病院のことも知ってるし、簡単かもしれない。

「それに、姉の方が美緒だと、その時に聞いたみたい」

「そっか…きっと、あの絵で」

「うん、そう」

「そっか…すっきりしました」

彼は、口元だけで応えると、視線を外した。

「じゃあ」

彼はそう言いながら、こっちを向きかけたけど、やめた。

そして、そのまま、門を出て行った。

私は、その後ろ姿が見えなくなっても、そこに座っていた。
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