鈍感過ぎる彼女の恋は。《完》
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「大丈夫かよ…」


一人で舞い上がって勝手に期待して、勝手に砕け散っただけの話だ。
何も始まってないんだし、傷付く必要もない。


「うん、大丈夫。」

「嘘つけ、全然大丈夫な顔してないから。」


そう言って高本はぎゅっと私を抱きしめた。
ぽんぽん、と頭を撫でてくれたけど、社長のそれを思いだして胸がキュウっと苦しくなる。

あの手は私のものじゃなかったんだ。

知らぬ間に流れていた涙に、この感情も一緒に連れて行ってと願う。


「ほんとに大丈夫だから。ごめんね。高本、泣いてる女嫌いなのにね。」


恋愛でピーピー泣くような女は嫌いだといつか言っていた。
自分がまさかそれになるなんてその時は思いもしなかったけど。


「ばーか。お前は別だっつの。」

「はは、さすが、持つべきは同期だね。」

「…そろそろそれも卒業しようと思ってるんだけどね。」

「え?」


聞き返した時にガチャリとミーティングルームの扉が開く音がした。

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