溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~


「いいもん、好きだよ? 雑炊。お米だし」

「ふーん。じゃ俺はひとりでタラバガニを思う存分……」

「カニ⁉ そんなセレブ食材入れるなら先に言ってよ!」

「好きなもん好きなだけ入れるのが鍋だろ。ほら、さっさと買い物行くぞ」


な、鍋の定義ってそうだっけ……? 私は安くて簡単でおなかが膨れる最強の節約料理だと思っていたんだけど。

そんなことを思いながら、蓮人と連れ立って近所のスーパーへ。徒歩圏内なため、車は使わずふたり並んで歩くことに。

雨は上がっていたけどかなり寒くて、もう冬がすぐそこまで来てるんだなぁとぼんやり思う。

来月は、クリスマス、か……。できれば、蓮人と一緒に過ごせればいいんだけどな。

歩道の途中、私は星に願うように、頭上の夜空を仰ぎ見た。でも、天気のせいなのか、それともここが東京だからなのか、星はひとつも姿を見せてくれない。


「叶わないってことなのかな……」


うなだれてアスファルトを見つめ、ため息交じりにぼそりとこぼす。それが少し聞こえたらしい蓮人が、私のほうを向く。


「何か言ったか?」

「……ううん。寒いなーって」

「お前の地元のほうがもっと気温低いんじゃないのか?」

「それはそうなんだけど……なんか、東京のほうが、寒く感じる」



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