溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「そんなしみじみ言うことか? ……まあいいけど。それより、腹減らねえか?」
私の胸中なんて知る由もない蓮人の気軽な対応が、今はありがたい。
「はい! 減りました! ご主人様!」
私も気分を明るく変えたくて、元気よく挙手までして空腹を主張した。
「素直でよろしい。どうする? 外で食べるか何か買ってくるか……」
「昨日外食だったから、家で食べたいな。この家って土鍋ある? 簡単だしお鍋とかどう?」
我ながらいい思い付きだと思ったのに、冷たい視線でジロリとにらまれる。
あれ? 蓮人は、鍋ダメな人?
「……お前、それは猫舌の俺への挑戦だな」
「あっ。……ごめん、忘れてた」
そういえば蓮人って、完全無欠のイケメン御曹司に見えて、熱いものだけが苦手なんだった……。
「いいよ。その代わりお前にフーフーしてもらうから」
甘えた子どもみたいな言い方に、くすっと笑ってしまう。
「どっちがペットかわからないね」
「調子に乗ってると、お前は雑炊だけにする」
すっかり機嫌を損ねたらしい蓮人だけど、その様子すら今はなんだか可愛く見える。こんな表情を見られるのも、ペットの特権だもん。