溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「も、もう寝るの?」
そっと彼の手を取りつつ、とぼけたふりで聞いてみる。すると“姫”なんて言っていた紳士はどこへやら。意地悪い笑みを浮かべた彼がぼそっと呟いた。
「……寝かすか、馬鹿」
「きゃっ」
突然体が宙に浮き、思わず悲鳴を上げた。蓮人の逞しい腕が、私の背中と膝裏をしっかり支えている。
これは、もしやお姫様抱っこ……!? やばい、この人私の心の準備なんて無視でベッドに直行する気だ!
その予感は的中し、軽々抱き上げられた私はベッドルームへと運ばれた。照明のほとんどが落とされた部屋の中で、棚の上の小さなランプだけがあたたかいオレンジ色の光で辺りを照らす。
そこに浮かび上がっているのは、巨大な天蓋付きベッド。その天蓋からまるでベッドを隠すようにして垂れ下がる薄いレースのカーテンをくぐって、蓮人は私をベッドの上に下ろした。
私たち、このまま、本当に……? ばくばく鳴る心臓の音を聞きながら、蓮人を見つめる。
彼は無言で私に覆いかぶさり、シーツの上に投げ出された私の手を、縫い付けるように強く指を絡ませて握った。
額にかかる前髪からのぞく彼の瞳は情熱的で、それでいて切なそうで――。