もう泣いてもいいよね
タケルはテーブルのところにあぐらをかいて座った。
ジーンズの上にTシャツで、ジャケットを羽織っていた。
見た目は今時の若者だ。
その時、ふと思い出した。
あの時のことを。
「タケル、小学校の時、山で…」
「ああ、あの時は大変だったよな。足滑らせてケガしたから、町の病院に運ばれてそのまま転校しちゃったもんな」
「え?」
「だからさ、おまえにまともに、さよならも言えずに、ずっと気になっていたんだよ」
タケルは頭をかきながら言った。
「…ケガして転校しただけ…だっけ?」
タケルの顔をのぞき込みながら、あらためて確かめてみた。
「そうだよ。なんで?」
タケルは怪訝そうな顔で答えた。
(やっぱり転校してたんだ…)
「私、タケルと会わなくなった時のことをよく覚えてなくて…」
「なんだよ、それ。おれのこと忘れてたの?寂しいな~」
「ごめん、でも、本当にタケル?」
なにしろ13年振りの再会だ。
分かれというのも無理がある。
「そうだよ。…あ、そだ。ほら?ここの傷、覚えてないか?」
タケルはあごの傷を指さした。
「あ、あの時の…」
それは私が木から落ちた時にタケルが下敷きになってくれて、岩に顔を打ち付けて切った傷だった。
「まだこんなに痕になってる」
「ごめんね」
「いいって。皆美はおれが守るって約束しただろ?」
「あ…」
本当にタケルだ。
「良かった…」
私は少し涙ぐんだ。
「なんだよ?おれ、かっこよかったか?」
タケルがちょっと慌てていた。
「うん。ちょっとね」
私は涙ぐんだまま笑った。
「でも、なんでうちに?」
私はインスタントの珈琲を渡しながら、突然現れた幼なじみに聞いた。
「…おまえ、会社辞めたって?」
珈琲カップをもてあそびながらタケルが言った。
「え?なんで知ってるの?」
「おまえのおばちゃんが、様子を見てきて欲しいって連絡してきたんだ」
「え?母さんが?なんでタケルに?」
頭の中は?だらけになった。
あんな辞め方だから、実家に連絡がいったのだろうか?
「まあ、おまえのとこ、中山家っていうか、特に深雪おばちゃんには、おれのじっちゃんが死ぬ前も、死んでからもいろいろ世話になってるんだぜ」
ジーンズの上にTシャツで、ジャケットを羽織っていた。
見た目は今時の若者だ。
その時、ふと思い出した。
あの時のことを。
「タケル、小学校の時、山で…」
「ああ、あの時は大変だったよな。足滑らせてケガしたから、町の病院に運ばれてそのまま転校しちゃったもんな」
「え?」
「だからさ、おまえにまともに、さよならも言えずに、ずっと気になっていたんだよ」
タケルは頭をかきながら言った。
「…ケガして転校しただけ…だっけ?」
タケルの顔をのぞき込みながら、あらためて確かめてみた。
「そうだよ。なんで?」
タケルは怪訝そうな顔で答えた。
(やっぱり転校してたんだ…)
「私、タケルと会わなくなった時のことをよく覚えてなくて…」
「なんだよ、それ。おれのこと忘れてたの?寂しいな~」
「ごめん、でも、本当にタケル?」
なにしろ13年振りの再会だ。
分かれというのも無理がある。
「そうだよ。…あ、そだ。ほら?ここの傷、覚えてないか?」
タケルはあごの傷を指さした。
「あ、あの時の…」
それは私が木から落ちた時にタケルが下敷きになってくれて、岩に顔を打ち付けて切った傷だった。
「まだこんなに痕になってる」
「ごめんね」
「いいって。皆美はおれが守るって約束しただろ?」
「あ…」
本当にタケルだ。
「良かった…」
私は少し涙ぐんだ。
「なんだよ?おれ、かっこよかったか?」
タケルがちょっと慌てていた。
「うん。ちょっとね」
私は涙ぐんだまま笑った。
「でも、なんでうちに?」
私はインスタントの珈琲を渡しながら、突然現れた幼なじみに聞いた。
「…おまえ、会社辞めたって?」
珈琲カップをもてあそびながらタケルが言った。
「え?なんで知ってるの?」
「おまえのおばちゃんが、様子を見てきて欲しいって連絡してきたんだ」
「え?母さんが?なんでタケルに?」
頭の中は?だらけになった。
あんな辞め方だから、実家に連絡がいったのだろうか?
「まあ、おまえのとこ、中山家っていうか、特に深雪おばちゃんには、おれのじっちゃんが死ぬ前も、死んでからもいろいろ世話になってるんだぜ」