もう泣いてもいいよね
「ちょうどよかったわ。ご飯よ」

「うん」

「父さんはまた出張?」

「ええ、そうよ」

それが当然のように楓は答えた。

父はお子守様に関係ないので、宮大工をしている。

その仕事柄、職場は日本中の神社などで、いつも出張ばかりだった。


「楓、片付けが終わったら私の部屋においで」

綾女が言った。

「はい」

楓は娘が帰ってきた理由を聞けるのだろうと、少し安心した。

綾女との話には、いくら母親でも口を挟めないのだ。


香澄は母の安堵した顔を見て、久しぶりに母の作ったご馳走を堪能した。


香澄は食事をしながら、さっきの綾女の話を思い返していた。

知りたくなかった話も含まれていた。

よく、その事実に耐えられたと思う。

確かに今のままでいいとは思っていなかった。

いつまでもタケルのそばにいられたらと、思っていたのだ。

でも、時間が限られていたということは、思ってもみなかった。


あと4ヶ月…


香澄はその事実を深く考えたくなかった。
 
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