もう泣いてもいいよね
元気のないタケルは、それでも暗くなりかけた山道で、私と香澄の歩みを気にしながら登ってくれた。

片手にライトを持っていて登りにくいので、ちょっとした段差は上から手を引っ張り上げてくれる。

息が上がりだした香澄に合わせるように歩調を緩める。


1時間も歩くと、みんな顔が真剣になっていた。

「まだ半分も来てないけど大丈夫か?」

「うん、大丈夫」

私はVサインをした。

タケルはにこっとしてVサインを返してきた。

おいおい…


「えっと、私はちょっと…」

香澄が息が荒い。

「そっか。じゃあ、ちょっと休もう」

タケルはそう言って、香澄をそばにあった大きな木のところに寄りかからせた。

「座ると余計に疲れるから」

「ありがと」


私はその場で立ち止まったが、ふと、周りの風景に見覚えがある気がした。

「ここは…」

「ああ」

私のつぶやきに気付いたタケルが私の後ろの方を指さした。

振り向いてタケルの指さした方をライトで照らすと、崖があり、その下に小さな洞穴があった。

「あ、あの洞穴…」

「そうだよ。13年前、皆美と会うのが最後になった場所だ」

「タケル…」

「大丈夫だ。今日は一緒だよ」

私の心の中を見透かしたかのように、そう言ったタケルの表情が頼もしく見えた。

「それに、今日は香澄も一緒だ」

タケルが目で香澄を示した。


そうだった。

この3人でいれば、これ以上頼もしいことはない。

香澄もこっちに向けてVサインをした。

「タケル、ありがと。もう大丈夫だよ」

香澄が真っ直ぐ立って言った。

「じゃあ、行こうか」

タケルが少し大人びた笑顔で言った。

やっぱり、タケルもオトコなんだ。

今はタケルに頼り切っている。

そんな感じがした。
 


ただ、ここに来ても、あの曖昧な記憶はハッキリしなかった。

何も新たに思い出せなかった…
 

私は何を忘れているのだろう? 
< 78 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop