もう泣いてもいいよね
途中、もう一度休憩を取った。

意外と険しい登山道に、どうしても香澄の体力が持たなかった。


「ごめんね」

「気にするなよ、香澄。この険しい道だ。当たり前だろ」

「でも…」

「そうだよ。タケルはどっちかというと体力バカだけど、香澄はお嬢様タイプなんだから」

「そうだよ…って、なんだそりゃ?じゃあ、皆美はなんだよ?」

「私は元気な文学少女よ♪」

「はあ…」

「なんか、最近は結構元気なのよね」

「そ、そうか…」

「あ、ありがとね」

タケルと香澄がまた変な雰囲気だった。

「なに?」

「タケル、もう私大丈夫」

香澄が慌てて立とうとした。

「え、香澄無理だよ。もう少し休みなよ」

「うん、そうだよ。あと5分休憩ね」

「…わかった」

香澄はちょっと無表情な感じでまた木に寄りかかった。


香澄は何かを隠そうとする時はあの表情になる。

今までは、その表情も出さないようにしていたのに気付いていたが、さすがに疲れで出てしまったようだ。

でも、今は聞く時じゃない。

さらに疲れさせる必要はない。



私はまだ見えない峰の方を見上げた。

この辺りはまだ森が深い。

かすかに、木の間から満月が見えていた。

出発して2時間だから、8時くらいだろうか。

子守花は何時頃に咲くのだろう?

その前に、本当に見つかるのだろうか。


タケルと香澄が、「ある」と言ったことを疑っている訳じゃない。

でも、心の奥底にある小さな不安はぬぐえなかった。


確かに満月だが、他に何か条件があったら…

今日、見ることができるのだろうか…
 
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