もう泣いてもいいよね
第2章 再会
まだ11時にもなっていない。

次の仕事を探さないといけないが、しばらくは休みを取る時だと思った。


いつもは原稿のチェックとかでしか使っていなかった会社近くの公園に足を向けた。

都会の真ん中なのに、だだっ広くて静かな空間が広がる。

木陰のベンチも空いていたが、穏やかな天気の中、陽射しの当たるベンチに座った。


陽射しが暖かい。

鳥の声も聞こえ驚いた。

気持ちを変えると、ここはこんなに違った場所だった。

今までは私にとって「公園」じゃなかったことにあらためて気付いた。


目の前を仲の良さそうな老夫婦が通りかかり、立ち止まった。

老婦人の方がこっちのベンチに誘うような仕草をしたが、老紳士は首を振った。

こっちを見ながら二人で何か話していたが、そのまま立ち去った。

4人は座れるベンチだが、他人とでは落ち着かないのだろう。

それともここは彼らの「いつもの場所」だったのかもしれない。

悪いことしたかな。



犬を連れた人もいた。

こんなオフィス街の真ん中の公園に、私服で犬を連れてくる人も珍しい。

きっと、この辺りにも再開発でタワーマンションができているのだろう。

この辺りだと最低7,8千万くらいか。そんなとこに住める人は、ローンが組めるとしても、かなりの高収入か資産家のはずだ。

私には無理な話だ。

でも、玉の輿に乗れば私にも住めるかも?

バウ!バウ!

そんな馬鹿なことを考えていると、いきなり大型犬から吠えかけられた。

飼い主が「どうした?」と言っているが、ちらっと見ただけで私に謝りもしない。

吠え続ける犬を無理矢理引っ張ってそのまま行ってしまった。

なんて礼儀のない人なんだろう。

資産家への偏見を持つぞ。
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