嘘つきな恋人
Dragonに通う様になって、3回目の夜に再び会うことが出来たオンナは
前に出会った時と同じように泣き顔だったけど、
あいかわらず、綺麗な顔だと思った。

大きな黒目がちの二重の瞳は笑ったら、どう見えるのかと、時折前触れもなく盛り上がって転がり落ちる涙の粒をそっと拭いたい衝動が沸き起こる。

彼女は俺の事を気にも留めていないのだけど、
俺の視線が時折彼女に注がれているのをドラゴンと呼ばれているオーナーはきっと気づいていたのだろう。

彼女が帰ったあと、彼女の隣に座っていた猫目の美人に
「美鈴ちゃん、優しすぎるからな。相手を信じすぎる。今回はあのアホと別れられるといいな。」
と、俺に聞こえるように、言い、

「美鈴は、お人好しなのよ。浮気相手の心配までする?まったく。困った子よ。」と猫目の美人はカクテルをゴクゴク飲み干し、お代わりを頼んでいる。

俺が帰ろうと立ちあがって、タクシーを呼ぼうとすると、

「傘を貸そうか?
春の雨に濡れると、運命のオンナに会えるらしいぜ。」

とドラゴンがニイッと笑顔を見せたので、
彼女が歩いて駅に向かったのがわかって、
会計を済ませ、傘を借り、急ぎ足で歩いた。
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