嘘つきな恋人
その2 別れ。
朝、目を覚ますと、隣には昨日出会ったばかりの男のぐっすり眠っている顔があった。

まつ毛が長い。
通った鼻筋、大きめの口に薄い唇。

やっぱり王子にみえる。


やっちゃったな。
酔っぱらってたし、かなり昨日はへこたれていたので、
つい、この王子の誘いに乗ってしまった。

いや、この王子にしたら、
私が誘った。という事になるのかもしれない。

どちらでも、構わないか

この先、こんな風に会うことはないんだろうから…


私がそっと身体を起こすと、窓から青い海が見えた。

いい部屋だね。


昨日は暗かったから気づかなかったけど、
部屋の隅にはダンボールがいくつかつみあげてあった。

引っ越してきたばかりだろうか?

私はそっとベッドから降りてシャワーを浴び、
ミントの香りのするシャンプーとボディーソープを借りて身体と髪を洗った。

いつもと違う匂いが少し気になる。
髪は後で洗い直さないと、ガサガサだな。
と思いながらため息を吐く。

私がバスルームの前で着替えてリビングに戻ると、
三島さんが起き出して、

「もう、服を着ちゃったんだ。」と笑いながら、残念そうな声を出す。

「はい。ドライヤー借りていいですか?」と聞くと、
洗面台の上の棚を開け、貸してくれ、

「引っ越して来たばっかりで、冷蔵庫空っぽなんだ。
朝ごはんハンバーガーショップで食べる?」と聞かれ、私が横に首を振ると、

「待ってて。
直ぐにシャワー浴びてくるから、コーヒーぐらい付き合ってよ。」

とバスルームに入って行った。

私はリビングで髪を乾かしながら、ボンヤリ海を眺める。

昨日抱かれた記憶がキスマークになって胸の間にいくつか残っている。

この身体では剛と元に戻ることは出来ない。

…きっと三島さんはワザと付けたんだな…

これで良かった

と自分に言い聞かせていた。
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