嘘つきな恋人
ゆっくり食事を楽しみ、
食後に私が席を立った隙に当然のように会計は終わっていた。

無理に支払うようにするより、今度、ネクタイでも贈ろうと

「ごちそうさまでした。」と言うと、

「今度はお泊まり付きで来よう。」と微笑んだので、聞こえないふりをしておくと、

「困った女だな。」と私の手を取って歩き出した。

今日はずうっと手を繋いでいるみたいだ。と気づいたけど、
今更、手を離したらおかしい気がする。

なんだか、三島さんの思い通りになっているような気がするのは気のせいだろうか…


遅くならずに送ってくれた三島さんは当然のようにまた、
部屋まで送ってくれるつもりみたいだ。

「あ、あの…
部屋でコーヒーでも飲みますか?」とエレベーターの中で聞くと、

「それって純粋にコーヒー?」

「そ、そのつもりです。」

「じゃ、やめとく。
襲わないと約束ができない。」とわたしの顔を見るので、

私が黙ると、
大きなため息を吐いて、私の手を引き、エレベーターを降りた。

「玄関で帰る。」

と言って、いつものように私に玄関を開けさせ、一緒に中に入ると、
私が灯りをつける前に、私の頭を抱え込んでくちづけをした。

今日のはかなり熱く、激しいキスだ。
息が乱れ、かすれた声で、

「リン、俺を信じて。
俺はリンだけいればそれでいいんだ。」と耳にもくちづけながら、甘く囁く。

私は激しいくちづけに声も出なくて、
三島さんのセーターをギュッと握りながら、くちづけを受ける。

もうこれ以上くちづけしたら、私からも求めてしまいそうだ。

そう思って、言葉にならない声をあげると、

三島さんは唇を離し、

私の体を支えて息を整えながら、

「リンは嫌いな男とこんなキスはしないよ。」

と瞼や、頬や鼻の頭にそっとキスをする。

…私もそう思うよ…

…もう、好きになってもいいの?と自分に聞きながら、

私は涙が流れているのがわかる。

「好きだよリン。」

と三島さんは私の涙を指で拭ってから、

もう一度短いキスを唇にして、三島さんは部屋から出て行った。


…信じてもいいの?

また、裏切られても後悔しない?

私は壁に寄りかかったまま

三島さんが出て行ったドアをずっと見ていた。
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