嘘つきな恋人
剛は昔の付き合ったばかりの頃の話しを楽しそうにして、ビールを飲んでいる。

私もうなずきながら、微笑む。


昔話ばかりするのは

もう、自分達が一緒の未来はないと

確認しているのかもしれない。


「美鈴が今も好きだよ」と剛は微笑むけど、

もう、どうしても戻って欲しいと思っていないことが、私にはわかる。

少しづつ、お互いが過去になっていっている。


私は寂しい気持ちで一杯になるけれど

ただ、それだけだ。



私は剛との未来を自ら捨てたのだから…


剛は

「いつまでも、美鈴を頼ってはいけないなって

思っているんだ。

三島さんも美鈴を待ってるし…」

と私の顔を楽しそうに覗き、

「もう、こうやって、会うのはよそうと思う。

今まで、気持ちの整理に付き合ってくれてありがとう。

美鈴がもどれないと思っているのはよく分かったから…

俺が、少しずつ、…諦めていくだけだ。

美鈴は俺を気にせず、

前に進んで欲しい。」

と私を真っ直ぐな真面目な瞳で見つめ、

頬をそうっと撫でて、立ち上がった。


「…ずっと、好きだったよ」と私が見上げると、

「うん。わかってる。
美鈴を大切に出来なかったのは、俺だ。
後悔してる。」

と私をしばらく見つめ、決心したように個室をでていった。


涙で周りがボヤける。
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