【完】こちら王宮学園ロイヤル部







「……ぼくが傷つかないなら、ルノは傷つかなくて済む。

困るんだ、ぼくたちは共鳴してしまうから」



「ルア、くん……」



「だけど近頃、気になることがあって。

共鳴するルノの感情が、ここ2週間くらいとっても穏やかだった」



ルアくんが、小さく微笑む。

それから伸ばされた指先が、わたしの頬を撫でた。



「おひめさまのおかげだよ。

……だからずっと、きみのことが、気になってた」



「っ、」



グレーの瞳がブレることなくわたしを射抜く。

どんな意味であれ「気になってた」と言われてどきりとするわたしの頬から指をそっと動かしたルアくんは、わたしの髪をひと房引き寄せて。




「おひめさまの魔法に、かかったのかな」



身を乗り出して、髪に落とされるやわらかなくちづけ。

実際に肌に触れたわけでもなんでもないのに、一瞬にして全身が体温を上げる。体温はすごくすごく熱い、のに。──くすぶって、消化不良。



「ルア、くんは……」



「……うん」



「そうやって閉じこもれば……

塞ぎこめば、ルノくんが傷つかなくて済むって、考えてて……実際、そうかもしれないけど、」



何度も何度も囁かれてきた「王子」という言葉。

第一だとか第二だとか、誰がつけたかわからない嫌味なそれ。だけど彼自身は、王子という言葉を、素直に受け入れていた。──それは。



「自分が"王子"になれば……

ルアくんが嫌味な呼び方をされることなんて、なくなるって。ルノくんは、そう思ってるんだと思う」



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