【完】こちら王宮学園ロイヤル部
うんざりするわと椛先輩がため息を漏らす。
それから「ルノ」と呼ばれて顔を上げれば、存外優しい瞳をした椛先輩と目があった。
「ルアはルアで、ルノはルノ。
他人に比べられて傷ついてんのに、さらに追い打ちかけるように自分で比べて傷ついてんじゃねえよ。安心しな、お前はいい子だよ」
「……誤解生まれそうなんで頭撫でるのやめてもらっていいですか」
「ふは、嫌いじゃないくせに」
そっと惜しむように撫でてから、手が離れる。
頭には、じわじわと触れられていた感触だけが残った。
「あれ、南々先輩じゃないですか?」
嫌いじゃないに、決まってるじゃないですか。
そうじゃなきゃルアが突き落とされたあの日。……あなたに大事な弟をまかせたり、してませんよ。
「ほんとだ。……私服姿って新鮮だねえ」
「……たしかにそうですね」
言われてみれば彼女とプライベートで会うのははじめてだ。
……いや、会うっていうよりも完全に尾行だけど。
「で、その待ち合わせ相手はまだ来てねえの?
普通デートで女の子待たせたりする?そんな男ぜったいやめといた方がいい、って、」
「……先に来て隠れてたんじゃないですか?あれ」
夏の空によく映える白いワンピース姿の彼女。
ウエストをブラウンのベルトで締めていて、スタイルの良さが引き立つ。そんな彼女の後ろからまわって、彼女の目を手でふさいだのは待ち合わせ相手の先輩。
おどろいて振り返ったであろう彼女になにか話しかけていて、どう見てもふたりで楽しそうに笑ってる。
……うん。あれもう付き合ってる距離感ですよね。