【完】こちら王宮学園ロイヤル部



呼んだくせに、返事しても何も言ってくれない。

それがすごく不安になって、だけどこの雰囲気だけは、とても心地良かった。



「前に……狙ってるって、言っただろ」



「え? ああ……言ってましたね」



わたしが、彼の探している姫なのかもしれない、という話を、夕帆先輩から聞かされた後。

彼はわたしに「狙ってる」と言ったけど、それは冗談じゃないだろうか、ともすこしばかり思っていた。……だって、いつみ先輩だし。



「そう言っとけば、少なからず牽制になると思った。

でも実際は、何の牽制にもなってねえし」



「牽制……?」



わずかに顔を上げた先輩と、至近距離で視線が絡む。

……あ、だめ、だ。




「俺もいい加減、限界なんだよ」



「いつみ、せんぱい……」



この距離感はだめだ。

だって、あの日と同じ。キスされそうになったあの時と同じ。……あれは、ルアが気づいてくれたけど。今日は、誰もいないし。



「っ、」



頰を撫でられて、一気に顔が熱くなる。

視線を逸らしたいのに逸らせなくて、心臓がいつもよりも速いペースで脈打つ。



「なあ、南々瀬」



──逃げられない。

そう悟った時にはもう、遅い。



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