【完】こちら王宮学園ロイヤル部
あの後。
「俺のもんにならねえか?」って先輩が聞いてきたあと。真っ赤になって固まったまま動けなくなったわたしは、声に救われた。
「ななせ……?」
「っ、ルア、」
わたしが出ていってからしばらく経っても帰ってこないことに、どうやら不信感を抱いたらしい。
寝てて良いよと言ったのに待っていてくれたらしいルアがおりてきてくれたおかげで、わたしは「おやすみなさい!」と逃げるように彼とリビングを去った。
きっと何かあるってわかってたのに、ルアは何も聞かずにいてくれて。
最初にベッドに入った時と同じようにわたしを抱きしめて、頭を撫でてくれていた。
翌朝、会うのがすごく不安だったのに。
ほかのみんなに悟られないようにするためか、先輩は「おはよう」と何もなかったみたいに声をかけてきて。
あのままの対応を続けられたら、困るのに。
なんでもないようなそぶりに寂しくなるなんて、すごく自分勝手だ、わたし。
旅行から帰れば、夏休みが終わるまでの日は浅い。
課題も業務も終わっているのを良いことに、「予定があるので行けません」を貫き通して、夏休みは顔を合わせなかった。
だから今日、あの旅行ぶりに顔を合わせる。
旅行の日は車で学校まで戻り解散したのだけれど、最後まで先輩はいつも通りなままで。
「なんかあった?」って椛に聞かれたけど、いつも通りに振る舞った。
……間違っても、告白されたことも彼を好きだってことも言えなかった。
相手が椛だから、尚更。
……ちゃんと告白されたわけじゃないけど、椛の気持ちを知っている以上、言えなかった。
「言えない事情があるの?」
「……ある」
「……そっか」