【完】こちら王宮学園ロイヤル部



てっきり怒ると思ったのに、「それなら仕方ないよ」と言うみさと。

なんだか偉くあっさりで驚いたけれど、よくよく考えれば彼女はまだわたしを好きでいてくれる大和と付き合っているわけで。



「……後悔しない?」



「……、しない」



「……なら、言わなくても良いんじゃない?」



そういうところは、意外と大人なのかもしれない。

健気に待つタイプみたいだし。



「言わなくても良いって……

せっかく好きって言ってもらってんのに、」



「黙って大和。

南々瀬が言わないって言ってるんだから良いの。……男にはわからない複雑な女心だってあるんだから。気にしちゃだめだよ南々瀬」




……いくら大和のことを好きでも、こういうところははっきりしてるし。

みさとに「ありがと」って返して、そこからは他愛ない話をして学校に向かう。そうすることで、心臓を落ち着けていたというのに。



「あれ、なんか校門さわがしくない?」



「ほんとだ。……なんかやってんのか?」



どこぞの城の門だと言いたくなるほど大きなゴシック調の門。

登下校の時間のみ開け放たれ、閉まっている時は門柱の下にある小さな扉から出入りするのだけれど。その開け放たれた門のあたりがやたらと騒がしい。



なんだなんだと、近づけば。

騒がしい理由は、至極簡単なものだった。



「に、逃げたい……」



校門を入ったところにある、大きな花壇。

そのそばにある大きな桜の木。それを植えた周りを囲うようなブロックに腰掛けているのはどう見たっていつみ先輩。そしてその周りに、残りの5人。



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