【完】こちら王宮学園ロイヤル部
しかしまあ、わたしが何を言ったところで先輩は手を離してくれそうにない。
それを嬉しいと思ってしまってるんだから、もうどうしようもない。
「一緒に来てもらってなんですけど……
受験勉強とか、だいじょうぶ、ですか?」
「1日ぐらいどうってことねえよ」
そう言われても、センター試験まではあと2ヶ月ほどだ。
ロイヤル部のみんなで一緒にいるときだって、先輩ふたりが卒業してしまうことにどことない寂しさが漂うせいか、未来の話は減ったと思う。
それに、みんなは知らないけどわたしはいなくなるし。
理事長を介して両親から連絡があった。わたしは来月終業式が終わったあと、家にキャリーケースを取りに帰り、空港に向かう。
どこで暮らすのか決まっているらしいけど、まだ教えてもらってないし。
ひとまず移住先に行く前にのんびりしようという理由で、その数日後に合流する両親をハワイで待つことになっている。
つまり冬休みに入れば、わたしはもうここにいない。
クリスマスと年越しはハワイで過ごすことになっているし、別れの言葉も言わない。
「……まあ、いつみ先輩なら受かると思いますけど」
「ふうん?」
「……なんですかその意味深な笑み」
みさとと大和には、移住してから手紙を出す。
だからわたしの口から日本にもどってこないことを告げるのは、夕陽だけだ。
「お前がそう言うなら受かるだろうな」
「……責任重大にするのやめてください。
そんな信頼勝手に寄せられても困るんですけど」
「信頼じゃねえよ。
……俺が勝手に自分の中で、お前を心の拠り所にしてるだけだ。ジンクスみたいなもんだよ」