【完】こちら王宮学園ロイヤル部
心の拠り所とかジンクスとか、そんな大げさな……
それで万が一落ちたらどうするんだ。……いや、いつみ先輩なら受かると思うけど。
「男なんて案外単純なもんだろ」
「……どこが単純なんですか」
「好きな女の期待には応えたくなるんだよ」
熱っぽい視線に、惑わされそうになる。
何も甘やかに囁かれたわけでもないのに、ふつふつと自分の中で湧き上がってくる羞恥心が、わたしの頰を赤く染めてしまう。
「……ほかの男に負けたくねえしな」
ぽろっと。
どこか気持ちを込めた一言に、先輩の顔をまじまじと見てしまった。
「負けたくない、って……」
「前も言っただろ。
お前のことじゃ制御がきかないって。お前に好きな男がいるって知らされたのに、まさか俺が平常心でいると思ってるのか?」
「っ……」
ねえ、どうすればいいの。
好きな相手から惜しみなく向けられる愛しさと甘さを、どうやって拒めっていうの。嫌いな相手なら躊躇わずに拒めるのに、好きな場合は?
離れることがなければ、受け入れられる感情。
いやむしろ、受け入れたい感情なのに。
「……南々瀬」
言いたい。言いたい、言えない、でも言いたい。
好き。好きなの。あのときから変わらないあなたの感情に、同じだけのそれを返したいの。……でも待って、"あのとき"ってなに?