【完】こちら王宮学園ロイヤル部



「あとで話がある」



「……はい」



「学校まで帰った後、家まで送ってやるから」



どうすることもできずに先輩を見つめていれば、そのときに話そうと言われて、うなずいた。

わたしのその返事を見た先輩は、スッとわたしに向けていた甘さを引く。



それからはいつも通りで、

甘いセリフで惑わされるようなこともなくて。



「……時間余っちゃいますね」



結局離さなかった手だけが、不自然にぬくもりを共有する。

途中で女の子同士のペアが集まった集団とすれ違えば、羨ましそうに「ラブラブだねー」と揶揄われた。ほかのペアにもなんだか温かい視線を向けられたけど、恥ずかしいからやめてほしい。




「あと20分か。……潰すにしても微妙だな」



どこかで買い物するわけでもなく、中華街で食べ歩きするでもなく。

淡々とポイントをまわって、残りはゴール地点一ヶ所のみ。



「写真撮ってあげるー!」と言われて女の子たちに先輩との写真を何度か撮ってもらったけど、それ以外はただ話しながら回っただけ。

まあ、間に合わなくなってダッシュして回る、となれば運動嫌いなわたしにとって苦しいから、余裕がある方がいい。



「自販機で飲み物買って、海でも眺めませんか?

ひとりだと苦痛ですけど、ふたりなので20分ぐらいならなんとかなりますよ」



「……そうだな」



そうするか、と言われて。

ゴール地点で待っていた先生に、カードにチェックをしてもらう。目の届くところなら時間まで自由に過ごしていいらしい。



観光を兼ねたウォークラリー。

とはいえメインがホテルの豪華ビュッフェとあって、やっぱり色々とアバウトだ。



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