シンデレラの魔法は解けない
平さんは携帯を切りながらあたしに言う。
「藍ちゃん、俺、急用が出来て」
「分かっています」
そう答えながらも、どうするべきか必死で考えた。
何の役にも立たないあたしは、一人で平さんの家に帰るべきだろう。
だけど、平さんから離れたくなかった。
真也さんや北野さんが言うように、ストレスを溜めすぎた平さんは、とうとうブチ切れてしまうかもしれない。
あたしはそんな平さんの、気持ちの受け皿になってあげたい。
少しでも気持ちを楽にさせてあげたい。
「一緒に行きます」
そう言ったあたしを、平さんは驚いたように見た。
だけど、
「ありがとう」
そう言ってあたしの手を握った。
大きくて優しい手だが、その手は少しだけ震えていた。