シンデレラの魔法は解けない
「俺は真也たちが言う通り、東京に出る前は最悪な人間だった。
荒っぽくて、怒りに任せて喧嘩するような人だった。
でも、東京でマトモな生活をするようになって、マトモな知り合いが出来ると思っていたよ」
平さんの話に頷くあたし。
あたしの横に座り、煙草を口に挟む平さん。
そんな平さんは、切なげに天を仰ぐ。
空には星が輝いていて、皮肉にもすごく綺麗だと思った。
「マトモに生活して、もちろんマトモな彼女も出来た。
でも、俺が気を抜いてスウェットで外に出たり真也たちと会ったりすると、彼女たちは幻滅して逃げていった。
……みんなはかっこいい俺と付き合いたい訳であって、かっこいい俺は、完璧な男じゃなきゃいけなかったんだよ」
「そんなの……酷いです」
思わず声に出していた。
確かに平さんはかっこいい。
だけど、かっこよくて完璧な平さんでいるために、息抜きも必要だ。