あなたは誰にバツを与えたいですか?
 わたしと彼女の間に愛美の声が割って入った。彼女の指がわたしの引き出しを指していた。
 わたしは思わず机の中を覗きこんだ。そこには見覚えのない茶色の財布が入っていたのだ。

 わたしを押しぬけるようにして、横原さんが机の中を覗きこんだ。
 そして、その財布を手に取った。

「やっぱり、あなたが犯人だったのね」
「違う。そもそも何でそれならこんな目立つところに置くのよ」

 わたしが犯人なら、もっと目立たない場所に隠す。学校内はいくらでも隠せる場所があるのだ。

 自分ではないという一心でそう口にしたが、周囲は冷ややかな目でわたしを見つめた。

「何? そういうことを常日頃から考えているの? きもい」

 横原さんは財布の中を確認すると、ほっと溜息を吐いていた。

「お金はどうだった?」
「無事」

 愛美とそんなやり取りを口にしていた。

 わたしが犯人なわけがない。だが、周囲はそうは思わなかったようだ。
 クラスメイトの冷たい視線が、わたしに突き刺さっていた。

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