十五の行方
「あーつーいー」


今日の最高気温は三十五度らしい。猛暑日すぎる。


蝉はミンミンうるさいし、青空は雲一つないし、まさに盛夏で全然嬉しくない。


……暑い。溶ける。早く涼しいところに行こう。


近くの店に向けて、どんどん早足になった。


「あの、すみません」

「はい」


すれ違いざまに呼びとめられて、振り返り。


「っ」


暑さも忘れて立ち止まった。


メイクをしていて、日傘をさしていて、服だって制服じゃないけど、面影がある。


……目の前の人が誰かなんて、そんなの。


息を呑んだ俺に、彼女はゆっくり笑った。


安心したような、懐かしそうな微笑み。


ぬるい風に、ふわりと髪がひるがえる。


「久しぶりだね」

「ああ。……久しぶり」


——駆け抜けた夏の。


「今も十五が好きなのか」

「うん。好きだよ。ずっと好きだったよ」


——たくさんの。


「ねえ、まずは君の名前を教えてくれない?」


俺たちの、十五の行方。




Fin.
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