不埒な専務はおねだーりん

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「おいしい!!」

浜井さんはコーヒーを一口飲むと、うわあっと歓声を上げた。

「気に入っていただけて、良かったです」

耐熱ガラス製のコーヒーサーバーをデスクに置くと、私もコーヒーを味見した。

(うん!!いい味!!)

小型のオフィスキッチンでコーヒーを淹れるなんて初めてだったけれど、家で淹れたのとさほど変わらない仕上がりで大満足である。

「こんな美味しいコーヒーが秘書室で飲めるなんて奇跡だわ。生憎、私と遼平先輩にはこういうセンスの欠片もなくってね……」

「母に仕込まれていましたから」

私はそう言って浜井さんのマグカップにコーヒーのおかわりを注いだ。

事務作業や書類作成よりは、母に教え込まれたお茶やコーヒーの支度の方がずっと気が楽だったし、これ以上の練習は不要のようだ。

来客にお茶をお出しするのも、秘書の仕事のひとつである。

専務の元を訪問する方はそれなりの肩書をお持ちなので、秘書室にはいつも上等なコーヒー豆や高価な茶葉が一通り揃えられていた。

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