わたし、結婚するんですか?
 だが、
「ざ、財産はありません」
と言うと、

「だろうな」
と言われてしまう。

「しかし、お前は、社長の従妹なんだろう?
 家には金がありそうだがな」
と言う遥久に、

「あるかもしれませんが、それは私のお金ではありません」
と答えると、

「……堅実だな」
と言われた。

 褒められたのだろうかな? と思ったが、遥久は、そのまま前を見て、黙っている。

「洸」

「は、はいっ」

 その何処か思い詰めような口調に、洸の返事をする声もつい、裏返る。

「確かに俺はお前に秘密がある」

 ごくりと洸は唾を吞み込んだ。

「これから夫婦としてやっていくのなら、すべてを明らかにした方がいいのもわかってる。
 だが……」

 だがっ!? と洸が鞄を抱いたまま、身を乗り出すと、遥久は洸の額に手をやり、押し返した。

「下がれ。
 落ち着け。

 危ないだろうが」

 そう言い、溜息をついたようだった。
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