わたし、結婚するんですか?
やはり、この人、なにかが怪しい気が……。
盛田の話を思い返しながら、洸は帰りの車の中で、身を守るように鞄を抱きかかえる。
すると、見ていないのかと思った遥久が前を見たまま言ってきた。
「どうした、洸。
取らないぞ、お前の鞄なんか」
いやいや。
鞄を取られたくなくて抱いてるんじゃないですよ。
これは私の装甲なんです、と洸は自分の心を守ろうとするかのように、胸の前で、がっちり鞄を抱いていた。
「……盛田がなにか言ってたか?」
ふいに遥久はそう訊いてきた。
「課長が呑み会にしか現れない幽霊部員だった話を少々」
他には? と問われ、それだけだと言うと、
「そうか」
と言う。
っていうことは、他になにかあるんですよねーっ、と洸はますます強く鞄を抱いたが、それを見た遥久が笑い出す。
「なんなんだ、それは。
俺が偽の婚約者となって、お前の財産をかすめ取ろうとしているとでも?」