わたし、結婚するんですか?
 ちょっと息、切らしてるし……。

 ずいぶん時間もかかってる。

 でも、散々迷って苦労して、此処に来ても、この人は言わないかな、と思った。

 まるで、此処で出会うのが運命であるかのように見せかけるために。

 やっぱり、お母さんが言うように、とんだストーカーだな、と洸は笑う。

 遥久は目を閉じ、少し考えたあとで、口を開いた。

「洸、聞いてくれ。

 俺は今までの人生、大事なものなんて、そんなになかった」

 そう言い切ったあとで、
「ああいや、家族も友人も大事だが」
と彼らの顔が頭をよぎり、今、聞いているわけでもないのに、悪いと思ったのか、そう付け足してくる。

 そんな遥久に洸は、たぶん、この人、仕事仲間も上司もチャトランもその辺の猫も大事だろう、と思っていた。

 喫茶店でまずいコーヒー淹れてるじいさんも。

 ラッキョウつけてる、まだ見たこともない、ばあさんも。

 言うことは過激だが、そういう人だと今はわかっていた。
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