わたし、結婚するんですか?
 いや、冷静になった今、考えてみれば。

 勝手に相手を好きになっただけで、相手が自分のことをどう思っているかもわからないのに、別れてくれってどういうこと?
と彼女は思っていたのだとわかるが。

 このときは、まったくそのような考えには思い至らなかった。

 自分が頑張って、身綺麗になって、洸に好きだと言う。

 そのことしか、頭になかったからだ。

 まあ、葉山に言わせれば、
「課長は、今でも全然冷静じゃないですよ」
と言うところだろうが。

『……わかった』
と言われ、通話を切られた。

 その感じから、たぶん、もう電話はかかってはこないだろう、と思われた。

 何故だかわからないが、なにか呆れていたようだから。

 よし、次に、かけるかっ、と勢いに乗った遥久は、お気に入りの白いソファに腰を落ち着け、スマホのアドレス帳にある番号にかけては、その番号を消していった。
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