わたし、結婚するんですか?
あの仔猫が売れてしまわないことを願いながら、急いで家に帰った遥久は、とりあえず、今、付き合いのある女たちに連絡を取った。
相手が出るなり、早口に、
「すまんが、好きな女が出来たんだ、別れてくれ」
と言う。
一瞬、つまった女は、何故か、
『……もう付き合ってるの?』
と訊き返してきた。
自分の言い方になにか違和感を覚えたようだった。
だが、相手がなにを思ったかなど考えず、ただ、機械のように、同じ言葉を繰り返していた。
「好きな女が出来たんだ。
別れてくれ」
まあ、もともとたいした付き合いではなかったから、大丈夫だろう、と思ったあとで、ようやく、さっきの相手の言葉が頭に入ってきた。
どうやら、もう付き合っているのかと訊かれたようだ。
そんな洸と俺が付き合うとか。
そんな夢のような未来が簡単に訪れたりするわけないだろうっ、と思いながら、
「いや、別に付き合ってはいない」
と付け足した。
沈黙があった。