わたし、結婚するんですか?
 




 ぼんやり、洸の記憶がなくなってからのことを思い出しているうちに、社長の自宅に着いていた。

 社長夫婦はさっさと観劇に行き、社長そっくりの娘、美沙とその弟、はーさん、こと、葉平(ようへい)が後に残された。

 さすが小さくても女だ。

 美沙はそこらのOLと変わらない目つきで、値踏みをするように、ふーん、と自分を見ている。

 これが洸ちゃんの彼氏かあ、とその小さな顔に書いてあった。

 一方、男は単純なので、すぐに膝に飛び乗ってきて、

「ねーねー、釣りに行こうよー」
と誘ってくる。

 そのチャトランにも似た愛らしい黒い瞳を見ながら、遥久は思う。

 お前か。

 お前のせいだな。

 お前が川に釣りに行くと言ったせいで、洸が余計なものを見て、俺がひどい目にあったわけだな。

 しかし、小さな男の子など猫と同じ。

 こちらが機嫌悪くとも、動じることなくすり寄ってくる。

 気がついたら、車に乗せて、言われるがままに、駄菓子を買いに行かされていた。
< 346 / 368 >

この作品をシェア

pagetop