わたし、結婚するんですか?
ぼんやり、洸の記憶がなくなってからのことを思い出しているうちに、社長の自宅に着いていた。
社長夫婦はさっさと観劇に行き、社長そっくりの娘、美沙とその弟、はーさん、こと、葉平(ようへい)が後に残された。
さすが小さくても女だ。
美沙はそこらのOLと変わらない目つきで、値踏みをするように、ふーん、と自分を見ている。
これが洸ちゃんの彼氏かあ、とその小さな顔に書いてあった。
一方、男は単純なので、すぐに膝に飛び乗ってきて、
「ねーねー、釣りに行こうよー」
と誘ってくる。
そのチャトランにも似た愛らしい黒い瞳を見ながら、遥久は思う。
お前か。
お前のせいだな。
お前が川に釣りに行くと言ったせいで、洸が余計なものを見て、俺がひどい目にあったわけだな。
しかし、小さな男の子など猫と同じ。
こちらが機嫌悪くとも、動じることなくすり寄ってくる。
気がついたら、車に乗せて、言われるがままに、駄菓子を買いに行かされていた。