わたし、結婚するんですか？
　今日は低いって……と思いながら、

「あのー、私、以前、此処に来たとき、どんな感じでしたか？」
と訊くと、一真は不思議そうな顔をする。

「じ、実はその、この間、三階から落ちちゃって。
　部分的に記憶喪失っていうか」
と言うと、ああ、と佐野は笑う。

　とっつきにくいくらい整った顔が、柔らかい印象に変わる。

　どきりとしたが、遥久に対するどきりとは、全然違う感じがした。

「それで、電話で様子がおかしかったんですね」

　そうですか……。

　頑張って誤魔化したつもりだったんですが、やはり、様子はおかしかったですか、と思いながら、洸は一真に訊いた。

「あのー、以前、此処に来たとき、私、テンション高かったんですか？」

「まあ、式場にテンション低く来る人もあまり居ませんけどね。

　乗り気でなく来る方はたまにいらっしゃいますが。

　式場とかドレスとか見てるうちに、相手は気に入らなくとも、なんとなく、テンションの上がってくる場所ですから」

　特に女性の方は、と一真は言う。
< 72 / 368 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop