わたし、結婚するんですか?
 そして、チラと洸の足許を見て言った。

「此処へ来ただけで、テンション上がりませんでしたか?」

 どきっとした。

 靴に砂がついているのを見られたようだ。

 一真は特に追求せずに、
「生命は海から生まれたというだけのことはあって。
 人間も海を見ると、なんか、ぱあーっと解放感にあふれちゃったりするんですよねー」
と言ってきた。

「で、つまり、津田様は、式場にいらしたときのご自分のご様子がお知りになりたいわけですよね?」

「は、はあ、すみません。
 式の打ち合わせじゃなくて」
と洸は言ったが、一真は、

「いえいえ。

 では、どうぞ、ロビーへ。
 ご案内致しましょう」
と微笑みかけてくる。

 どうでもいいんですけど、あの……

 そろそろ手を離していただけないでしょうか?

 建物の陰で、一真にがっちり手を握られたまま、洸は思っていた。






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