わたし、結婚するんですか?
「でも、別になにかがあって、そんな風だったというわけではないと思いますよ。

 私がそう感じただけで、たぶん、それで、津田様的には通常の状態だったんですよ。

 ――と、今日、津田様を見ていて思いました」

 また、佐野さん、佐野さん、と入江に止められている。

 パッと見、切れ者っぽいが、こんなスタッフ、駄目なのではあるまいか……。

 だが、ルックスも良く、人当たりがいいので、上品なおばさまとかが、一真を指名してやってくる。

 娘の結婚式の打ち合わせ、と称してやってくることもあれば、普通の会合に広間を借りる打ち合わせで来る人も居るようだった。

 客を呼ぶ招き猫のような人だな。

 ……主に女性をだが、と思っていると、

「津田様、記憶喪失ということですが。
 少し、式場内を見て回られたらどうですか。

 なにか思い出せるかもしれませんよ」

 付き合いますよ、と一真は笑って言ってきた。







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