呼び名のない関係ですが。
「遅くなった。ごめん」
テーブルの横に立って律儀に頭を下げた男性は急いで来たのだろう、軽く息を切らしている。
潔く頭を下げる姿勢の良さは、先ほどの待ち合わせのときの高遠さんとそっくり、まるでコピーのようだ。
相田さんは「潤哉さん、遅いんだもん。でも、お疲れ様」と言いながら、嬉しそうにヘニャリと笑う。
高遠兄弟は、お兄さんの方が弟より身長は低いものの、それでも平均身長はゆうに超えているようだ。
何よりも顔の造作自体が良く似ていて、酔いの回った相田さんが高遠さんに〝イケメン兄弟〟と冷やかしていたのもよく分かる。
でも普段、社内では好青年と評されながらもどこかつかみどころのない高遠さんと、真面目で温厚そうなお兄さんとでは、まとっている雰囲気が面白いくらい違っていた。
間違い探しのクイズみたいに彼らの違いを探すことに夢中になっていた私は、いつの間にやら高遠さんのお兄さんを注視していたらしい。
顔をあげたお兄さんと、がっつり視線がぶつかってしまった。
彼が戸惑いの表情を浮かべていることに気付いて『見過ぎた』と心のなかで呟く。
「どちら様?」
私と目線を合わせたまま尋ねたお兄さんの質問に、最初に反応したのは高遠さんだった。
「会社の先輩の三峰さん」と、高遠さんは幾分冷めた声で告げる。
お兄さんは安心したように「ああ」と頷いた。
「いつも弟がお世話になっております、兄の高遠潤哉と申します」
スーツの胸ポケットから取り出された名刺を見て、私は思わず立ち上がった。
考えるよりも早く染み付いた動作で、名刺を両手差し出して受け取り、頭を下げていた。
テーブルの横に立って律儀に頭を下げた男性は急いで来たのだろう、軽く息を切らしている。
潔く頭を下げる姿勢の良さは、先ほどの待ち合わせのときの高遠さんとそっくり、まるでコピーのようだ。
相田さんは「潤哉さん、遅いんだもん。でも、お疲れ様」と言いながら、嬉しそうにヘニャリと笑う。
高遠兄弟は、お兄さんの方が弟より身長は低いものの、それでも平均身長はゆうに超えているようだ。
何よりも顔の造作自体が良く似ていて、酔いの回った相田さんが高遠さんに〝イケメン兄弟〟と冷やかしていたのもよく分かる。
でも普段、社内では好青年と評されながらもどこかつかみどころのない高遠さんと、真面目で温厚そうなお兄さんとでは、まとっている雰囲気が面白いくらい違っていた。
間違い探しのクイズみたいに彼らの違いを探すことに夢中になっていた私は、いつの間にやら高遠さんのお兄さんを注視していたらしい。
顔をあげたお兄さんと、がっつり視線がぶつかってしまった。
彼が戸惑いの表情を浮かべていることに気付いて『見過ぎた』と心のなかで呟く。
「どちら様?」
私と目線を合わせたまま尋ねたお兄さんの質問に、最初に反応したのは高遠さんだった。
「会社の先輩の三峰さん」と、高遠さんは幾分冷めた声で告げる。
お兄さんは安心したように「ああ」と頷いた。
「いつも弟がお世話になっております、兄の高遠潤哉と申します」
スーツの胸ポケットから取り出された名刺を見て、私は思わず立ち上がった。
考えるよりも早く染み付いた動作で、名刺を両手差し出して受け取り、頭を下げていた。