臆病者で何が悪い!

「どんな感じって、そうだな……い、意地悪、かな」

生田の素顔なんて、言葉に出来ない。土曜日の夜のことを思い出しそうになって頭を振る。困ったことに心拍数まで上がり出す。

「意地悪? 可愛くて意地悪しちゃう感じ?」

「へっ? い、いや、そんなんじゃなくて、本気の意地悪」

「どういうこと? もっとちゃんと教えて!」

希って、意外に引かないよな。

「それより! このことは、他の人には言わないでもらえるかな? 同じ課だから、いろいろやり辛いことになりそうだし」

「それでも私には、話してくれたんだね? もちろん、沙都がそうして欲しいなら言わないよ」

希がにっこりと頷いてくれる。

「だから、田崎さんにも。お願い」

「あぁ……。そっか。同じ課だからね」

一瞬希の表情が翳る。

「付き合っている人とは何でも話したいよね? なのに、ごめん。少なくとも私と生田が別の課になるまでは、お願い」

私は手を合わせてお願いした。

「分かってるよ。大丈夫、田崎さんには言わないよ」

「ありがとう」

とりあえず、そうお願いだけはしておこう。そうは言っても恋人同士。いつかは話してしまう日が来るかもしれない。それはそれで仕方がないとも思う。

「最近、田崎さんとはあんまり話してないし。大丈夫だよ」

「……え?」

希がふっと窓の外に視線を移した。その横顔が、どことなく寂しげだった。

「何か、あった……?」

「何かも何も、何もないから、よくわからない」

希が力なく笑う。

どうして――。

「分からないなら、ちゃんと話した方が――」

「うん。そうする。それより、今日は沙都の話でしょ?」

希はそれ以上話をしたくないみたいだった。

私なんかが首を突っ込んでいい話ではないと思う。だけど――。

希が私を頼ってくれるまでは、待っていよう。

「希。私でよければ、いつだって話きくから。いつでもね」

それだけを告げた。

「うん」

希が田崎さんと一体どうなっているのか。私には全然分からない。
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