臆病者で何が悪い!
いつの間にか寝てしまっていたようだ。ふと気づくと、部屋が真っ暗になっていた。気怠い身体を起こして、ベッドに腰掛ける。
ちゃんと、ベッドまで来たんだ――。額に手を当てて目を閉じた。
コートも着たままだったことに気付く。重苦しい腕を上げてコートのボタンを外していく。そうして脱いだコートから姿を現したのは、ピンクベージュのワンピースだった。そう言えば、これ着て生田とデートなんだって思ってたんだっけ……。そんなことが、酷く遠い昔のことのように思える。
お姉さん、ごめんなさい――。
お姉さんは、生田にとって私は特別なんだって言ってくれたけれど。きっと、そうではない。
さっきマンションでみかけたあの人――。
写真でも思ったけれど、実物を見てより強く思った。ちゃんと、生田が好きになった人なんだって。見かけだけじゃない。醸し出す雰囲気が落ち着いていて、優しそうでその人柄を見て選んだ人なんだって、すぐにわかる。きっと、男が真剣に付き合おうと思うタイプの女性だ。もっと、分かりやすい可愛さや綺麗さを持った女性なら、もう少し落ち込まずに済んだのかな……。
いや、そんなことはない。どんな人であれ、多分傷付いていた。
生田から逃げて来たのに、考えることはそんなことばかりで。結局どこからも逃げられていない。本人を見てしまうことが、こんなにも心を乱すなんて。
苦しくてたまらない。
他人に興味を示さない生田が、あの人には私にしたように触れて、キスをして、そして――。
どうしようもない。私の心と脳にべったりと張り付いて離れない。振り払っても振り払っても、あの女性と生田の顔が交互に浮かぶ。痛くて、熱くて、また涙がこぼれる。こんな時だけ、実家に居座って。月曜日の朝になるまで、私は実家のこの部屋に引きこもり続けていた。