臆病者で何が悪い!
遠山の結婚祝いの飲み会というイベントが、とてもとても私の気分を重くしていた。
心を無にして、飲み会の企画と日程調整を行って。
メールで同期全員にお知らせを出したけれど、希の返信を開くのが怖かった。”ちょっと、沙都に話がある”なんて書かれていたらどうしようって。
でも、”出席できます”という文面以外はなくて、パソコンの画面を前に息を大きく吐いている自分がいた。
私、どれだけ臆病なんだ。親友なのに。これまでずっと、何でも話して来た友達なのに……。
その希に会いたくないなんて。こんなに、小さい人間だったんだ。
「すみません。今日、同期の結婚祝いで。申し訳ございませんが、お先に失礼します」
重い腰を上げて席を立ち、隣に座る田崎さんをはじめ係長に断りを入れた。
「ああ、いいよ。内野さんはいつも最後まで残ってくれているし。こういう時くらいはね」
「ありがとうございます」
係長の優しい言葉に頭を下げ、そのまま部屋を出て行こうとした。
「遠山のお祝いでしょ? 楽しんできてね」
田崎さんが私に笑顔を向けてくれる。今では、その笑顔が辛い。
「田崎さん、遠山のことご存知なんですか?」
「寮に住んでいた時、隣に遠山が新人で入って来て。それから何かと付き合いが続いていてね」
「そうだったんですか……。じゃあ、お先に失礼します」
こうして仕事を終えて職場を出る時、どっと疲労感が襲うのだ。それだけ、無意識のうちに心と身体に無理をさせているのかもしれない。
一応、私と桐島が幹事なので、早めに落ちあってお祝いをする会場に向かった。会場は、いつも使う居酒屋『運』だ。
桐島と私とで店員さんといくつか打ち合わせをして、予定通り19時から会は始まった。