臆病者で何が悪い!


「さっきから、何をそんなに百面相してるんだ?」

「ううん、別に。普通に、してます」


完全に玄関に向いていた身体を、生田の方へと戻す。脱出失敗。


「上着、脱いだら?」

「う、上着?」


ひいっ、と肩を大きくびくつかせた。


「家の中でそんなもの着ている必要ないだろ」

「まあ、そうだね……」


それは、暗に服を脱げと言っているの……?
普通、そんなあからさまなもの?


「何か飲み物取って来るから、くつろいでて」


いつもより幾分優しげな声で私にそう言うと、生田は立ち上がりキッチンの方へと行ってしまった。

とりあえず、いきなり事を始めるという訳ではなさそうだ。生田がいなくなると、私はホッとするあまり自然と大きく息を吐いていた。

そう、ここは、生田の住むマンションなのだ。


「なんでそんなところで小さくなって座ってんの」


両手に缶ビールを持った生田が部屋に入って来た。私は、部屋の角の隅に気配を消すように座っていた。


「こっちに来いよ」

「はい……」


部屋の真ん中にあるローテブルにその缶ビールを置きながら、生田が私を見る。

生田の住むこの部屋は、職場から地下鉄で15分ほどのところにあって立地は最高だ。部屋は一般的な1K。少し広めの部屋に、ベッドからテーブル、テレビ、机、本棚などすべてが置かれている。それなのに、えらくすっきりとした部屋だった。モノトーンでまとめられた室内は、無駄なものが一切ない。私の部屋とは大違いだ。

私、生田の住む部屋にいるんだよね……。

改めてそう考えると、思いもしなかった状況になっているなと実感する。


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