臆病者で何が悪い!
「ほら、こっち」
生田はベッドの淵にもたれて座り、缶ビールを差し出して来た。緊張が解かれないままで、おずおずと生田の隣へと進み出る。それでもどうやったってくつろいで座る気にはなれず、生田の隣で正座して座った。
「とりあえず、飲めよ。今日は途中で抜けて来たから、あんたもほとんど飲んでないだろう?」
冷えた缶ビールを生田から受け取る。30センチほど間をあけて座っているのに、生田が凄く近くに感じてさらに緊張が増す。
「そうだったよね。私、あのまま出て来ちゃったんだ……」
あの後、みんなどうしただろう。私のことなんて気にせず、楽しんでくれているかな。すべて放って投げ出してきてしまった。
「心配しなくても大丈夫だから。あいつらには俺が上手く誤魔化して出て来た」
「……上手くって?」
片膝を立てて座る生田の横顔を見つめる。一体、あんな状況でどううまくごまかせるのだろうか。
「適当に、だよ。それより、早く飲めよ。温くなるぞ」
「う、うん。じゃあ、いただきます」
なんか、私も誤魔化された気がする。でも、確かに手の中にある缶ビールの冷たさが指に伝わって来る。その冷たさがじんじんとして慌てて口にする。この状況も考えれば考えるほどムダに緊張するし、こうなったら飲むしかない。
半ばやけくそのようになってビールをぐいっと飲み込んだ。それでもやっぱり落ち着かない。
だいたい、キスまでした相手と密室に二人きりって、この後どういう展開になるのが普通なの?
やっぱり、お互い『傷心やけっぱち』コース?
そんでもって、朝起きたら『ああ、やってしまった……』ってなるやつ。
これまで読んだ小説の中にそういうのあったよね――。
懸命に、記憶から参考となりそうな小説のストーリーを探す。隣に座る生田を正面から見る勇気はない。だから、ちらちらと様子をうかがってみる。その横顔の表情からは何も読めない。私は私で、薄手のジャケットを脱いでしまったからブラウス一枚で。なんとも心許ない。