臆病者で何が悪い!
「……とにかく。今日は、酒飲んで、気が済むまで心の中のもの全部吐き出せよ」
私が一人不埒なことを考えまくっていると、生田がゆっくりと私の方を向きそう言った。
「え……?」
「全部吐き出したら、明日からはもうなんでもないことになってる。普通に笑えるよ」
これまで見たことないほどに、生田が優しい顔をするから。私は、間抜けな顔をするしかなかった。
「『全部忘れさせてやるから』って、そういうこと……?」
「そうだけど。他に何だと思ったんだ?」
「いや、別に、何も」
バカめ。
私の大バカもの!
まさか”自棄”だの”一夜限り”だの言えるわけがない。そんな下心、生田にはなかったんだ。これ、相当恥ずかしい。隠れて消えてしまいたい――。
「もしかして、違うこと考えてた……? キスまでした相手の部屋で二人きりだもんな」
生田が意地の悪い顔をして、私ににじり寄る。
「そ、そんなことは決して……」
あっという間に30センチの距離はなくなり、すぐ間近に生田の顔が迫る。
私は咄嗟に後ずさり身体を引いた。もう心臓がもたない。きっと今の私の顔は悲壮感で一杯だと思う。そんな私の顔をじっと見つめたかと思うと、生田がふっと息を吐き笑い出した。
「そんなに怯えなくても大丈夫だよ。今日は、手を出したりしないから」
「そ、そうだよね! 当たり前じゃんねぇ」
「ははは」と、相当に不自然な笑顔を貼り付ける。ホッとして、無意識のうちに吊り上がっていた肩がふにゃふにゃと下がり出す。
顔を伏せて笑っていた生田が、顔を上げる。当然その顔は笑っているんだと思ったら、そうじゃなかった。少し真面目な顔になっていたから、私もつられるように真顔になる。